YUKO'S LOG

審神者と光の戦士の兼業をがんばる女子の雑記帳

映画『刀剣乱舞』感想と『とうらぶ』というコンテンツと生きる楽しさについて【後編】

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『映画刀剣乱舞』のネタバレを含みますのでご注意ください。

正しいとされている歴史→信長は本能寺で死に、遺体は焼けて見つからず、安土城が焼けた理由は不明

正しい歴史→信長は安土城で死に、遺体は焼けて見つからず、安土城が焼けた理由は秀吉が信長を天守ごと燃やしたから

「殺害場所の誤認」はミステリーの定番ですが、それを本能寺と安土城で行うという発想がすごい…!

そうして三日月以外の刀剣男士たちは前者の歴史を守ろうと動き、三日月は後者の歴史を守ろうとするため、齟齬が生じ、三日月に疑心を抱く男士たちが出てくる。そんな刀たちの葛藤を人間臭く描くシーンは必要かつ不可欠。刀剣男士に好意を抱く女子たちはこういう「人として生きている」彼らを見るのが好きなのだ。そうでなければ、『刀剣乱舞花丸』のようなアニメは成立しない。

迫りくる二つの危機

一方で「彼らの本丸」にも危機が迫っていてる。「彼らの審神者」は寿命を終えようとしていて、代替わりを行おうとしているのですが、そのことが時間遡行軍にばれて、その隙を突かれてはいけないと、近侍である三日月はそれも隠そうとしているわけです。あっちでもこっちでも一人で色々秘密を背負わなければいけない映画の三日月、大変すぎる。

己のすべてを犠牲にして、正しい歴史と本丸の代替わりを守り抜こうとする三日月が、ついに折れる…!と思った瞬間、全てを知って駆けつける刀剣男士たち。主人公の業とその覚悟が、共に歩んできた仲間に手を差し伸べさせる、というこの展開には「靖子ォォォォ!」と内心叫んだものですが、本当にね!熱いよね!仲間の持ってきた薬?で復活した三日月は他の男士とともに本能寺の変にまつわる歴史を正しく導き、本丸に戻り今度は審神者の代替わりの隙を突こうと押し寄せた遡行軍を討つ…と奮戦するわけですが、強敵・大太刀相手に形勢不利な感じ。

その戦いに終止符を打ったのは、登場シーンからどう見ても何かあるとしか思えない素振りをしていた時間遡行軍の「無銘」と呼ばれる兵士の裏切りの一撃でした。あ、そういえばキミ居たよねー!と思う位に存在忘れてたし、薬研か不動の闇堕ちかなー?位に安易な予想をたててたら、割れた仮面の中から現れたのはまさかの新刀剣男士・倶利伽羅江でした。いや、再三伏線っぽいものはあったんですが、他のことに気を取られ過ぎてすっかり記憶の彼方だったから、ゴメンねーほんとゴメンねーみたいな。あと、満を持しての正体がそれかーいとポカンとした…仕方ない。これは仕方ない。

メソッド的には「悪の組織側のメンバーが終盤に洗脳が解けて仲間になる」という特撮の黄金パターンだし、劇場版限定もしくは先行登場戦士!の、これまた黄金パターンだよね…と一人納得していたのですが、ちょっと説明不足&唐突だった感は否めないかもしれません。

――そして、終幕

代替わりは無事に終わり、映画の本丸にはまだいとけない幼女が新しい審神者として迎えられる。安土城の焼け跡から薬研藤四郎を拾い上げた秀吉は信長を思い一瞬の間、涙するがすぐに兵たちに振り返り檄を飛ばす。すべてが、新たな一歩を踏み出したところで物語は穏やかに幕を下ろす――。

本当に、予想以上にいい映画でした。気になった点は何点かあったものの(特にアクションシーンはもっと引きでの映像があったらよかったな…!)よくぞここまで根幹をしっかりとおさえたうえで「とある本丸の物語」を描いてくださったなと思います。

いつか来る、その日に向けて

大広間にて、新しく主となった審神者の下座に今まで舞台で登場した刀剣男士がほぼ全員揃ったシーンは、一人一人の顔まではよく見えなかったものの、スーパーサプライズでとても嬉しかったです!嬉しかった通り越してちょっと吐きそうだった。個人的推しの大倶利伽羅役・猪野広樹くん!ちゃんと見えてたよー!ありがとおおおお!燭台切光忠役の東啓介くんがいなかったのが残念ですが、まさかのまさかで審神者はニッコリです。ぶっちゃけた話、『舞台刀剣乱舞』に出てた俳優さんたち、2.5次元の売れっ子ばかりなのに、よくほぼ全員揃ったね…!というビックリが先に立ちました。「特別出演」とエンドロールで紹介されていましたが、涙涙涙。

先代の審神者と三日月のやりとりや、他の男士の審神者に対する様子から、この映画の本丸はとてもいい本丸なんだな…というのが伝わっていました。審神者は刀剣男士たちを慈しんでいて、男士たちも審神者や仲間の男士たちを大切にしている。とても暖かい本丸だなぁと。そして、エンディングでは縁側で新しい審神者を囲んでだるまおとし等の子供用玩具で楽しそうに遊ぶ刀剣男士たちの姿や、三日月に甘える審神者の姿などが微笑ましく描かれます。そこに描かれるのは、戦でないときの本丸における優しい日常です。

審神者は人間、男士たちは物。いつか、別れの日は来ます。

メタな言い方をすれば『刀剣乱舞』もいつかサービス終了の日が来る。

その時まで、私は彼らにとっていい審神者でいよう。自分の本丸を大事にしよう。

ワクワクドキドキハラハラ、最後にはほのぼのしんみり。そんな気持ちにさせられるいい映画でした。映画化にあわせて書籍も多数出ていますので、映画で興味を持った方は是非チェックしていただきたいと思います。おすすめはシナリオブックと小説です!映画について、さらに深く考えることができるかと思います。他の書籍も追々購入してみたいと思います。

映画刀剣乱舞(小学館ジュニア文庫) (小学館ジュニア文庫 と 6-1)

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  • 作者: 時海結以,「刀剣乱舞-ONLINE-」より(DMM GAMES Nitroplus),小林靖子
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